カウンターアソールトCA230とCA290の違いを、国内の公式スペックと2026年に環境省が出した「クマ撃退スプレーの推奨要件」をもとに比べました。射程・噴射時間・重さ・価格の差と、選び方、持ち歩き方までまとめています。
2025年度のクマによる人身被害は238人、うち死亡13人。統計がある中で最も多い数字です。熊スプレーは出会わないための工夫(クマ鈴や声出し)とセットで持つ、最後の備えと考えてください。
- CA230とCA290の違いと選び方
- 環境省の推奨要件と2モデルの照合
- 正しい持ち歩き方・使い方と、誤噴射の防ぎ方
- 買うとき・借りるとき・捨てるときの注意点
CA230とCA290の違い|比較表と選び方
2モデルの成分は同じです。ちがうのは中身の量、届く距離、噴射できる時間、重さ、そして値段。
- CA230とCA290、どっちを選ぶ?
- 他社製品との比較
| 項目 | CA230/CA290 |
|---|---|
| 内容量 | 230 g/290 g |
| 本体重量(缶込み) | 約310 g/約380 g |
| サイズ(高さ×直径) | 215×φ53 mm/215×φ59 mm |
| 噴射距離 | 約9.6 m/約12 m |
| 噴射時間 | 約7秒/約8秒 |
| 公式ショップ価格(税込) | 20,350円/23,100円 |
| 有効成分(CRC濃度) | どちらも2% |
| 噴射方式 | どちらも霧状(高圧噴霧式) |
| 生産国 | どちらもアメリカ |
※数値は国内販売元モチヅキの公表値(2026年9月時点)。噴射距離・時間は無風の室内で測ったもので、屋外では風や気温で短くなることがあります。
CA230とCA290、どっちを選ぶ?
CA290は中身が約26%多いぶん、CA230より約2.4m遠くまで届き、約1秒長く噴射できます。そのかわり約70g重く、缶も6mm太い。価格差は公式ショップで2,750円です。
渓流釣りや山菜採り、調査の仕事など、山にいる時間が長い人はCA290。日帰りのハイキングが中心で、腰まわりを少しでも軽くしたいならCA230。この分け方でほぼ迷いません。

個人的には、迷っているならCA290をすすめます。70gの重さは歩いているうちに慣れますが、噴射できる1秒の差は、いざという時にあとから足せないからです。
他社製品との比較
UDAPやフロンティアーズマンなど、ほかの熊スプレーとの違いはベアスプレー徹底比較にまとめています。
日本で販売されている代表的な熊スプレー8製品
今、熊スプレーには「熊撃退効果が期待できる本物」と、一般の方が詳しくないことにつけ込んだ「熊スプレーとは呼べない偽物」が出回っています。購入時はご注意ください。
見分けるポイントは、カプサイシン類の有効成分濃度を示す「MC」または「CRC」の表記です。(MCとCRCは表現の違いだけで同じ意味です)まがい物にはこの記載がありません。
本記事では、熊スプレーの本場アメリカでEPA(米国環境保護庁)の登録を受けた製品と、それと同等の国産品のみを紹介しています。
- 有効成分CRC 1.0〜2.0%程度
- 噴射距離7.5m程度以上
- 噴射時間6秒程度以上
- 噴射形状霧状(ミスト状)で円錐状に広がる
環境省の「クマ撃退スプレー推奨要件」とCA230・CA290
熊スプレーには、世界共通の規格がありません。日本にも規格がなく、性能がまちまちな製品が出回っていました。
そこで環境省が2026年8月25日に公表したのが「クマ撃退スプレーの性能に係る推奨要件」です。同じ日に国民生活センターが出したテスト結果でも、製品によって噴射距離や噴射時間にはっきり差がありました。
| 環境省の推奨 | CA230/CA290 |
|---|---|
| CRC濃度:1.0〜2.0%程度 | 2%/2% |
| 噴射距離:7.5m程度以上 | 約9.6m/約12m |
| 噴射時間:6秒程度以上 | 約7秒/約8秒 |
| 噴射パターン:円錐状に広がる霧状 | どちらも霧状 |
| 安全装置:歩行中は外れにくく、すぐ外せる | どちらもセーフティクリップ |
| 携行:腰や胸付近に専用ケースで | どちらも専用ホルスターあり(別売) |
| 使用期限:期限を表示する | どちらも缶に表示 |
CA230・CA290の欄はメーカー側の公表値で、環境省が製品ごとに認定したわけではありません。とはいえ、数字の上ではどちらも噴射距離・時間の目安を余裕をもって上回っています。
他社製品の噴射距離・噴射時間と並べて見たい場合は、ベアスプレー徹底比較もあわせてどうぞ。
カウンターアソールトとは?「元祖・熊撃退スプレー」


カウンターアソールト
CA230


カウンターアソールト
CA290
(ストロンガー)
グリズリー(北米のヒグマ)がすむアメリカ・モンタナ州で開発された熊撃退スプレーです。唐辛子成分を使った熊スプレーの先がけで、日本では「元祖・熊撃退スプレー」と呼ばれることもあります。
レバーを押すと、唐辛子由来の成分が霧になって一気に広がる。熊の目・鼻・のどに入ると動きが止まり、そのすきに離れる。熊を倒す道具ではなく、自分が逃げる時間をつくる道具です。
アウトドア用品研究室(nebukuro.net)は、カウンターアソールトについて次のように紹介しています。
「日本で最初に販売されたクマ撃退スプレーといわれる『カウンターアソールト』。長年の実績もあり、仕事(調査・研究)する方はこのスプレーを選ぶ人が多い印象です。」
(出典:アウトドア用品研究室)



登山用品店で働いていたころも、調査や研究の仕事でヒグマのいる山に入る方ほど、カウンターアソールトを選んでいました。
有効成分はカプサイシン|強さは「CRC濃度」で比べる


有効成分は、唐辛子の辛み成分「カプサイシン・関連カプサイシノイド」。その濃さをCRC濃度といいます。


カウンターアソールトのCRC濃度は2%で、環境省の目安(1.0〜2.0%程度)の上限です。国内の販売表記には「320万SHU」ともありますが、SHU(辛さの単位)は測り方がメーカーによってちがうため、他社製品と比べるならCRC濃度の数字を見てください。
米国EPA登録とは?


カウンターアソールトは、米国EPA(環境保護庁)に熊撃退剤として登録されています。EPA登録の熊スプレーは、有効成分1〜2%、中身225g以上、噴射距離約7.6m以上、噴射時間6秒以上が目安です(米国国立公園局・グリズリーベア委員会)。
ただしこれはアメリカで販売するための登録です。日本で選ぶ基準としては、上で紹介した環境省の推奨要件のほうが実用的でしょう。
ヒグマにもツキノワグマにも使える?


使えます。国内の販売元は、ツキノワグマやヒグマのほか、犬やニホンザルにも撃退効果があると案内しています。CA230が本州向け、CA290が北海道向けという区別もありません。
ただ、100%効く道具ではない。向かい風だと届く距離はぐっと縮みますし、焦ると顔から外れます。次の章の研究データと使い方をあわせて読んでください。
本当に効く?研究データと国内の事例


効果を数字で示した研究と、国内で実際に使われた例を見ていきます。
- アラスカの研究データ
- 国内の事例
アラスカの研究データ
2008年に発表された研究では、1985〜2006年にアラスカで熊スプレーが使われた例を分析しています。カウンターアソールトに限らず、熊スプレー全般のデータです。
熊の攻撃的な行動が止まった割合は、ヒグマで92%、クロクマで90%。スプレーを持っていた人の98%は、近い距離で熊と出会ってもケガをしていません。一方で、約14%のケースでは使った本人にもスプレーがかかっていました。
国内の事例
2022年3月、札幌市でクマの冬眠穴を調べていたNPO職員2人が母グマに襲われました。1人が襲われるたびにもう1人が噴射し、2本を使い切ったところで母グマは去っています。
2023年10月には阿寒町で、母グマに右肩をかまれた男性が、かまれたまま噴射して助かりました。知床財団も、ヒグマの追い払いにスプレーをくり返し使っています。
反対に、同じ2023年10月の群馬県では、スプレーを持って散歩していた高齢女性が噴射できないまま頭や顔に大けがを負いました。持っていても、取り出せなければ使えません。
正しい使い方|持ち歩き方から噴射まで


クマは時速約50kmで走るといわれます。50m先にいても、数秒で目の前です。考えてから動く時間はないので、手順は体で覚えておくしかありません。
- 山に入る前の準備
- 持ち歩き方
- 使用手順
山に入る前の準備
缶についている黄色いプラスチックの帯(輸送用の封印)は、出発前に外しておきます。付けたままだと噴射できません。
国民生活センターは、練習用スプレーで実際に噴射してみることをすすめています。本番用を試し撃ちすると中身が減るので、練習は練習用で。ホルスターから抜いてクリップを外すまでの動きは、家で何度でもくり返せます。
持ち歩き方
リュックの中やサイドポケットはNG。環境省の推奨要件も、腰や胸付近に専用ケースで身に着けるよう求めています。腰ベルトかショルダーベルトの、利き手がすぐ届く位置に付けてください。



すぐに取り出せない熊スプレーは、持っていないのと変わりません。
使用手順
- 缶を縦に持ち、人差し指を発射レバーのリングにかける
- 親指でセーフティクリップのつめを手前に引いて外す
- 腕を伸ばし、熊の顔(目・鼻)をねらう
- 熊が5〜10mまで近づいたらレバーを押す
- 1〜3秒の噴射をくり返す
風下から噴射すると、成分が自分に返ってきます。国民生活センターも、クマより風上から使うよう呼びかけています。とはいえ本番で風向きを確かめる余裕はまずないので、多少かかるのは覚悟しておきましょう。
熊が離れたら、走らずにその場を離れます。一度使った缶は中身が減っているので、次の山行までに新しいものへ交換を。
人にかかったら失明する?危険性と応急処置
熊スプレーは熊を追い払うためのもので、人への安全性は考えられていません。かかった時の症状と、実際に起きた事故を見ておきます。
- 人にかかった時の症状
- 実際に起きた誤噴射の事故
- かかってしまった時の応急処置
人にかかった時の症状


| かかった場所 | 起こりうる症状 |
|---|---|
| 目 | 強い痛み、涙が止まらない、見えにくくなる |
| 皮膚 | ただれ、水ぶくれ、長く続くヒリヒリ感 |
| 鼻・のど | 激しいせき、息苦しさ、吐き気 |
成分が油っぽく、水では落ちにくいのがやっかいな点です。目に入ると、視力の低下など重い障害につながるおそれもあります。
実際に起きた誤噴射の事故
2023年12月、登山帰りの乗客が新幹線の車内でスプレーを誤噴射しました。2026年7月には名古屋市の郵便局で誤噴射があり、8人がのどの痛みなどを訴え、5人が病院に運ばれています。
2026年9月には岩手県北上市の中学校で、副校長が校庭に置き忘れたクマよけスプレーを生徒が噴射し、11人が搬送されました。人の多い場所では取り出さない。子どもの手が届く場所に置かない。どちらも、この1年で実際に起きたことです。
かかってしまった時の応急処置
とにかく大量の水で洗い流します。一度では落ちないので、痛みが引くまで洗い続けてください。症状が強ければ、すぐ医療機関へ。皮膚なら石けんを使うと落ちやすくなりますが、目には使わないでください。
ホルスターの選び方と、誤噴射を防ぐ持ち運び方
ホルスターは基本的に別売りです。本体と一緒に用意しておかないと、結局リュックに入れることになります。
- ホルスターの種類と選び方
- セーフティクリップの向きに注意
- 車や電車で運ぶとき
ホルスターの種類と選び方
| ホルスター名 | 特徴・価格目安 |
|---|---|
| 専用ホルスター ベルクロ式(CA230/CA290共通) | マジックテープで素早く抜けるナイロン製。ショルダーベルトにも付けられる。4,180円 |
| 専用バックルホルスター | バックルで開け閉めするタイプ。日本のクマ研究家の助言をもとに設計。約5,000〜6,600円 |
| CAバックパックホルスター | ショルダーベルトやヒップベルトに固定。ストラップ3本とカラビナ付き。5,610円 |
| CAベルトホルスター | 腰ベルト用のシンプルなタイプ。約3,600〜4,000円 |
缶の直径はCA230が53mm、CA290が59mm。「共通」と書かれたものなら両方入りますが、CA230専用品にCA290は入らないことがあります。
セーフティクリップの向きに注意
国内販売元のモチヅキによると、クリップが上下逆に付いていると、上から押されただけでレバーが下がり、ガスが出てしまいます。一度外したクリップを付け直すときは、取扱説明書の図で向きを確かめてください。



「クリップが付いている」だけでは安心できません。向きまで見るのが、出発前のチェックです。
車や電車で運ぶとき
新幹線での誤噴射のあと、モチヅキは運び方を3つ案内しています。ホルスターに入れるか、テープでクリップを固定する。ビニール袋に入れて密閉する。エアーキャップなどの緩衝材で包む。
夏の車内に置きっぱなしにするのもやめましょう。高温で缶が破裂するおそれがあります。
どこで買える?価格と買う前の確認点


通販のほか、登山用品店や一部のホームセンターでも扱っています。公式ショップ価格はCA230が20,350円、CA290が23,100円。クマの出没が多い秋は品切れもあるので、店に行く前に在庫を確認しておくと無駄足になりません。
Amazonの商品ページは、CA230はこちら、CA290はこちらです。
通販では、中身のはっきりしない類似品も並んでいます。買う前に見てほしいのは次の4点です。
- 「クマ用」「撃退用」と書かれているか
- CRC濃度(%)と、噴射距離・噴射時間が載っているか
- 使用期限が確認できるか
- メーカー・輸入元・販売元がはっきりしているか
並行輸入品にも本物はありますが、国内販売元の保証やサポートの扱いが変わることがあります。また、残りの期限が短い商品は、偽物というより古い在庫であることがほとんどです。
この4点を主要な熊スプレーごとに確かめたものが、ベアスプレー徹底比較です。カウンターアソールト以外も候補に入れるなら参考にしてください。
レンタルできる場所|知床・モンベル
熊スプレーは飛行機に持ち込めず、預けることもできません。北海道の山へ飛行機で行くなら、現地で借りるのが現実的です。
- 知床
知床自然センターなどで貸し出し(1,100円/24時間)
2026年9月17日から事前予約サイトが使えるようになった
受け取りは知床自然センター、返却は羅臼ビジターセンターやルサフィールドハウスも可 - モンベル
2026年2月に貸し出し店舗を拡大。全国の店舗で、要事前予約
3日間2,500円〜(保証金12,000円は返却時に返金)
貸し出し品はカウンターアソールトではなく「フロンティアーズマン ベアスプレー」
借りたら、その場で使用期限とクリップの向きを確認してください。料金や条件は変わることがあるので、最新の内容は各公式ページで。
借りて使い勝手が気に入ったら、フロンティアーズマンを自分用に買う手もあります。容量は234mLと272mLの2種類です。
使用期限と捨て方
古くなった缶は、ガスの圧力が下がって届く距離が短くなります。期限の見方と、捨てるときの手順です。
- 使用期限の目安
- 期限切れスプレーの捨て方
使用期限の目安
メーカーは4年での交換をすすめていて、期限は缶ごとに印字されています。基準になるのは「買った日から4年」ではなく、缶に書かれた日付です。
期限切れスプレーの捨て方
中身が残ったまま捨てたり燃やしたりするのは危険です。国民生活センターは、中身を空にしてから自治体のルールに従って捨てるよう案内しています。
まずは自治体のスプレー缶の出し方を確認し、わからなければ買った店か販売元に相談を。自分で出し切る場合は、風がなく、人家やペットのいない屋外で、風下に立たないようにして行ってください。
よくある質問
本文で触れきれなかった質問をまとめました。
- Q. 護身用として人に使えますか?
- Q. 熊スプレーは1本で足りますか?
- Q. 冬でも使えますか?
Q. 護身用として人に使えますか?
使えません。大型動物用で、人に使えば皮膚のただれや目の障害、呼吸困難を起こすおそれがあります。
Q. 熊スプレーは1本で足りますか?
行動時間や人数しだいです。アメリカのグリズリーベア委員会は2本持つことも検討するよう呼びかけていて、札幌の事例でも2本目で母グマが去っています。グループで1本を共有すると、離れて歩いたときに使えないので、一人1本が基本です。
Q. 冬でも使えますか?
使えますが、気温が低いとガスの圧力が下がり、噴射距離が短くなることがあります。寒い時期はカタログの数字どおりに届くとは考えないでください。
CA230とCA290、結局どっちを選ぶ?
山にいる時間が長いならCA290、日帰り中心で軽さをとるならCA230。どちらを選んでも、腰か胸に付けたホルスターから3秒で抜ける状態にしておくことが前提です。
届いたら、缶の使用期限とクリップの向きを確認して、ホルスターから抜く練習を何回かしておいてください。
UDAPや熊一目散など、ほかのメーカーも見比べてから決めたい場合はベアスプレー徹底比較へ。


登山・キャンプで必要なクマ対策情報を発信しています。熊スプレーの選び方、比較、安全な使い方、成分、飛距離、携行方法、注意点まで実用目線でわかりやすく解説。ヒグマ・ツキノワグマ対策を含め、初心者にも役立つ情報を整理して紹介しています。
『人間が危害を加える気持ちが無くても、熊は危険と判断して攻撃してくるかもしれません。熊スプレーは自衛の最終手段だと思います。』
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